さあ、召し上がれ
仕事を終えて帰宅したトキヤはニュース番組を見るためにテレビを付けた。すると画面にはソングステーションのセットとその司会者が映り、その端に赤い髪が見えている。トキヤがニュース番組にチャンネルを変えずに画面を見つめていると、やはりそこにいたのは音也だった。
音也は以前会った時より前髪が伸びていて、頬が痩せているように思えた。テレビ局の廊下で偶然すれ違って少しだけ何かを話したのが彼と最後に会った時のはずだが、それがいつなのかはっきりとは分からない。デビューして5年が経ってお互いに仕事が忙しくなり、連絡は取り合うものの、昔のように毎日顔を合わせたり、重なったオフの日に一緒に食事をする事ができなくなっていた。
久しぶりに顔が見たい。ゆっくりと話がしたい。そんな思いが胸に浮かんでくる。ずっと一緒に暮らしていた時には音也のあの明るさにうんざりする事もあったが、いつの間にかその眩しさにも慣れていた。それどころか、しばらく彼に接さなければ、心の一部分が空洞になって、物足りなさを感じるようになっていた。
「……それにしても、ちゃんと食事してるんでしょうか」
時折画面に映る音也の痩せた頬を見つめて呟く。今月末公開される映画の主演を演じ、更に主題歌を歌う音也の姿は最近宣伝の為に頻繁にテレビや雑誌で見かける。つまり、それだけ多忙ということだ。体調を崩さなければいいがと案じたその時、音也が咳込んでいる姿が映った。
「……」
「音也はちゃんと食事しているんでしょうか……。それに、先日のソングステーション見ました? 咳き込んでたんですよ。風邪でも引いたんでしょうか……」
「まあ、食事はしてるんじゃないの? 咳も喉が少し詰まっただけかもしれないしね」
「音也にそう聞いたんですか?」
「いや、オレの予想なんだけど」
「なら、適当な事言わないでください」
「……」
レンが瞼を閉じて黙り込む。
咳込む音也を見てからの数日間ずっとひとりで音也の体調を心配していた時に、トキヤがテレビ局内を歩いていると「神宮寺レン」と書かれた楽屋をたまたま見つけ、考える前に飛び込んだのが5分前だ。何を聞かれても数分間ずっと黙っていたものの、彼が読んでいた雑誌の表紙に音也の名前がある事に気づいて一気に悩みを吐き出した。
トキヤはレンに許可なく雑誌を手繰り寄せてページを捲る。そこには4ページの音也のグラビアと共にインタビュー記事が載っていた。最近買った服の話を読みながら息を漏らす。
「……イッキ、忙しそうだね」
「見れば分かるでしょう」
「暇よりもいいと思うけど」
「痩せる程忙しいんですよ」
「イッキの事が心配なら、メールでも電話でもすればいいだろう。『最近ご飯食べてるんですか? あなたの事が心配です』って」
「そんなの嫌ですよ」
「どうして? 喜ぶだろうに」
「…………とにかく嫌です」
頭の中に、音也に『ちゃんと食事してますか? 風邪引いてませんか?』とメールをする自分を思い描くとどうにも落ち着かない気分になり、トキヤは顔をしかめた。今度はレンが息を吐き、愉快そうに言う。
「素直じゃないなぁ」
「あなたに言われたくありません」
「あっそう。……手料理をちゃんと食べさせてくれるような可愛い子羊ちゃんがイッキにもできたら、イッチーも安心できるのにね」
「可愛い子羊ちゃん……」
トキヤの頭の中に、エプロンを付けた春歌と音也が仲睦まじく食事している姿が浮かんだ。未だに埋まらない心の空洞を痛感しながら、煌めく笑顔を浮かべている音也のグラビアを見つめる。
「それで、イッキが家に帰ると子羊ちゃんが『お帰りなさい。ご飯にする? お風呂にする? それとも』……痛っ!」
雑誌でレンの頭を殴りつけて黙らせる。それから机に突っ伏して瞼を閉じれば、暗闇の中に音也の笑顔が鮮やかに浮かんだ。
次にその顔を見るのがいつなのか、全く分からなかった。
しかし、その日はそれから間もなくやってきた。テレビ局内を歩いていると、背後から誰かが走ってくる音が聞こえた。近付いてきたそれはトキヤにぶつかって止まる。突然の衝撃によろめいたものの、何とか体勢を立て直して振り返れば視界が赤色に染まった。この赤色をトキヤはよく知っている。
「……音也」
「へへ、久しぶりー。元気だった?」
トキヤに抱きついたまま肩に顔を埋めていた音也が目を合わせて微笑む。その表情を見て、釣られて同じように口元を緩めながら「ええ、おかげさまで」と言葉を返す。
「そっか、よかった。さっきトイレの前通ったよね? 手洗ってたらトキヤの姿が見えたから、慌てて来たんだ」
「今すぐ離れなさい」
「手は洗ったってば!」
音也が少し頬を膨らませながらも、トキヤから体を離して向かい合う。やはり頬は以前より痩せていた。服の裾から覗く腕も細くなっている気がする。
「最近忙しそうですね」
「そうだねー。でも色んなところに呼んでもらえるから楽しいよ」
忙しさに愚痴を言うでもなく、笑顔でそう言いきるのが彼らしい。伸びた前髪を掻き上げる仕草を眺め、一度視線を足元に落とす。彼の履いているスニーカーの紐が解けそうになっていた。
「音也」
「ん?」
トキヤはしばらく躊躇した後に、小さな声で言った。
「……少し、痩せましたね」
「あー、そうなんだ。顔もちょっと痩せたからさ、前よりキリッとしたと思わない?」
目を上げると、音也が虚空を睨みつけていたが唇は笑っていて台無しだ。
「それはどうでもいいんですけど」
「トキヤの意地悪」
「結構です。それで、あなた、ちゃんと食事はしているんですか?」
「大体は食べてるけど。でもあんまり忙しかったり疲れてたりすると、もういっかーってなるんだよね」
「何を食べてるんですか?」
返答に顔をしかめつつも更に問い掛ける。
「ケータリングとかロケ弁」
「家では?」
「家だと適当にしてるかな。レトルトとかカップラーメンでも十分美味しいし」
トキヤは額に手を当てて嘆息すれば、音也が「だって、作るの面倒くさいよ」と子どものような口調で言う。鋭く彼を睨み、指を突きつける。
「『面倒くさい』ではありません。いいですか、忙しいのなら尚更自炊すべきです。栄養が偏れば体調も維持できず、仕事に支障をきたしますよ。この前、ソングステーションに出ていた時に咳き込んでいたでしょう」
「あれはちょっと喉が詰まっただけだけど……。でも、それもそうだよね」
音也が神妙な顔つきになり、目を伏せて考え込む。すぐに顔を上げた時には、目に決意の光が灯っていた。
「分かった。俺、やってみる!」
「そうですか。なら、料理で何か分からない事があれば私に聞いてください。それから、ちゃんと栄養の事も考えて作るんですよ。くれぐれも自分の好きなものばかり作らないようにしてくださいね」
「うん、分かった分かった」
本当に分かってるんですか。というか、本当に自炊するんですか? そう聞きたかったが、音也が時計を見て両手を合わせた。
「あ、もう行かないと……。ごめんねトキヤ、また今度ね。心配してくれてありがとう!」
「別に心配なんて……」と口ごもる間に彼は走り去っていった。その背中を見送りながら、トキヤは再びため息を漏らした。
――最近は料理にはまってるんです。トキヤに『自炊しなさい』って言われたのが切っ掛けだったんですけど、やってみたら意外と楽しくて色々作ったりしてます。頑張って、愛情たくさん込めて作るからみんなにも食べてほしいな。
「そうなんですよ、今料理が趣味になってて……。美味しいレシピ知ってる人がいたらぜひ教えてほしいですね」
「……よし、これで完成! 音也特製ペスカトーレでーす! 味には結構自信あるんだぁ」
音也が魚介類をふんだんに使ったペスカトーレを白い皿に盛り付けて得意げに見せた。
「へえ、美味しそうだね。ちょっとスパイスが足りなさそうだけど」
「……そうですね」
「イッチー、さっきから何をそんなにふてくされてるんだい?」
「別に、そんな事ありませんが」
トキヤはそう言いつつ、自分の楽屋に設置されたテレビの中で共演者に手作りのペスカトーレを振る舞っている音也をねめつけた。
「自炊しなさい」と注意した次の日に、音也から『早速料理してみたよー!』と不揃いに切られたスティックサラダの写真が添付されたメールが届いて、「ただ切っただけじゃないですか……」とトキヤは顔をしかめていた。しかし気が付けば、最近の音也はインタビューやテレビで「料理が趣味」と公言するようになり、時々送られるメールの写真を見ても、確かに腕前を上げているようだった。
「ちゃんと自分で料理するようになったんだろ? よかったじゃないか。体型もちゃんと戻ったみたいだしね」
「そうですね」
「これでイッチーも安心だ」
レンの言葉をぼんやりと聞きながら、「美味しーい!」と誉められて照れ笑いを浮かべる音也からは視線を外せなかった。
「……昔は」
「うん?」
「学園時代や、デビューしたての頃は、彼がねだってくるので私の料理を食べさせる事が多かったんです」
「そう」
CMに切り替わったのでようやくレンを見ると彼は楽しそうに、でもどこか優しくトキヤを見ていた。その目を見ていると、音也への不満がふつふつと沸き上がってくる。
「……その時は私の料理を喜んで食べていたくせに、今では何も言ってこない」
「イッキも成長して、親離れしたって事さ」
「親になったつもりはありません」
「じゃ、お嫁さん離れかな」
トキヤの頭の中に、エプロンを付けたトキヤを玄関先に置いて家を出ていく音也の姿が思い浮かんだ。とても奇妙な光景だ。
「……何言ってるんですか、あなた」
「さあね」
得体の知れないものを見る目を向けてもレンは涼しい顔のままだ。
「とにかく、イッキが手料理食べてくれなくなっちゃってイッチーは寂しいんだね」
「そういう訳じゃないですけど」
反射的に答えたものの、ならばどういう訳なのかは自分でも分からない。ただ、音也がこれから「トキヤー、料理作ってよー」とねだってくる事が無いのかと思うと、心の空洞が広がったような感覚がした。
それからしばらく経ったある日の昼、音也から電話が掛かってきた。
「もしもーし、俺だけど。トキヤ元気? 今大丈夫?」
「大丈夫ですよ。どうかしたんですか?」
「あのさあ、今日トキヤの家行ってもいい? 何か映画見たいからDVD貸してよ」
「構いませんよ。今日は夕方には帰りますけど、何時に来られますか?」
「本当? 俺も7時には帰れるよ! そのぐらいに行っていい?」
「7時ですか……」
トキヤは壁に掛かった時計を一瞥した。
「もっと遅い方がいい?」
「いえ、それでいいです。……音也、夕食は誰かと食べるんですか?」
「ううん、予定は無いよー」
「そうですか。なら、食事は私が作りますから家で食べませんか?」
「えー、俺も料理が上手くなったんだよ。トキヤにも食べてほしいな」
一度も食べた事が無い彼の手料理に心が少しぐらついたが、トキヤは自分の提案を押し通した。
「それはまた今度御馳走してください」
「なら、それでいいよ。じゃあまた後でね、ばいばーい」
「はい、待ってます」
不通音を聞いて通話を切る。目の前の鏡越しに、ヘアスタイリストの女性が微笑んでいる事に気付いた。トキヤの髪を触りながら話し掛けてくる。
「一十木さんですか?」
「ええ。DVDを借りに来るそうです」
「仲良しなんですね」
「そうでもないですよ。ただの同期のよしみです」
「そうですか? 一ノ瀬さん、さっきよりご機嫌になってますけど」
「……」
トキヤは自分の唇が緩んでいるのを見て、慌てて表情を取り繕いながらも頭の中では帰宅後の計画を立て始めた。
「お邪魔しまーす。うわ、いい匂い! 何々? もしかしてカレー?」
6時15分にやってきた音也は家へと入るなり目を輝かせた。彼を自宅へ招くのは久しぶりなせいか落ち着かないものの、トキヤは表面上にはそれをおくびにも出さない。
「何を作ろうか少し悩んだんですが、あなたが相手なら適当にカレーでも作っておけばいいと思いまして」
「うーん、嬉しいけど何か扱いが雑だね? でもやっぱり嬉しい!」
満面の笑みの音也がトキヤの腕を抱いてしがみついてくる。
「歩きにくいので離れてください」
「トキヤぁー、好き好きっ。早く食べたい!」
「分かりましたから」
甘えた声で擦り寄る音也は引き剥がそうとしても離れない。結局腕に音也をくっつけたままリビングまで行く事になった。
「ほら、座っててください。準備しますから」
「何か手伝うよ」
「後は盛り付けるだけですからいいですよ」
「そう? だったら片付けは俺がやるからね」
音也を椅子に座らせたトキヤはキッチンへと入る。コンロの火を付け、既に出来上がっているカレーを暖めなおす間に更にご飯を盛り付け、シーザーサラダとコーンポタージュを用意した。
「あー、美味しそう。見てるだけですごくお腹空いてきたよ」
座っていたはずの音也がカウンターからキッチンを待ちきれない様子で覗きこんでいる。
「もうすぐですから、先にサラダとスープを持って行ってください」
「はーい」
「何か飲みますか? 一応ビールもありますよ」
「トキヤも飲む?」
「飲みません。お酒はカロリーが高いんですから」
「相変わらずそんなの気にしてんの? 十分細いのにさ。トキヤが飲まないなら俺もいいや。それより早く早く」
子どものように急かしてくる音也にトキヤは少し笑った。昔もこんな風に腹を空かせた彼が何度も食事を催促してきた事を自然と思い出す。テーブルに着いた音也の「トーキーヤぁー」と成人しているようには到底思えない声を聞きながらカレーをよそった。
「音也」
「はい! はいはい!」
名前を呼んだ瞬間に音也が飛んできて、湯気を立てるカレーを見て嬉しそうに笑った。そして二人分の皿をテーブルへと運んでいく。トキヤもその後を追うと、既にスプーンを握り締めている。ここでトキヤが「待て」と言えば倒れてしまいそうな雰囲気だ。
「さあ、召し上がれ」
「トキヤの料理久しぶり! いただきまーす!」
そう言うや否や音也はスプーンで大きくカレーを掬い口に運んだ。トキヤはまだ食事に手を付けず、音也のその様子をじっと見守る。彼は咀嚼して飲み込んだ瞬間、目を細めて笑った。
「へへっ」
「何ですか?」
「トキヤの料理食べるのも久しぶりだし、一緒に食事するのも久しぶりだなーって思うと笑っちゃった」
「そうですね」
「ねえねえ、これってルーで作ったの?」
「いえ、スパイスから作りました。……初めて作ったんですがどうですか?」
「えっ、初めてなの!? そうとは思えないくらい美味しいよ! 凄いなぁ、さすがトキヤ。俺にも作り方教えてっ」
買い物をして帰り、レシピを見ながら作ったが音也はその味を気に入ってくれたようだ。ほっとした気持ちでトキヤもようやくカレーを口にすると、レッドペッパーによる辛みが途端に広がった。
「ねー、教えてよー。俺も料理もっと上手くなりたいよー!」
「……教えたら自分で作るんですか?」
「うん。俺もこんなの作りたい」
「嫌です」
「えー!」と言う非難の声を聞き流す。教えてしまえば、彼がトキヤに「作ってよー」とねだる必要もなくなる。そうすれば、音也に腕によりをかけた手料理を振る舞う機会がこれから一生なくなってしまいそうに思えた。別にそんな機会が無くてもトキヤの人生には何の支障も無いはずなのに、それを想像しただけで心の中がまた空になる。
「じゃあ、いいよ。またトキヤに作ってもらおーっと」
「私の気が向いたら、作って差し上げない事も無いですよ」
「って言いながら、どうせ俺がお願いすると作ってくれるんだろうなぁ……痛いってば」
「口に物を入れて喋らないでください」
「はいはい」
生返事をする音也をもう一度叱ろうとしたが、美味しそうに食事をする様子を見て、その気が削がれてしまった。そして、そのまま叱る事無くお互いの近況を話しながら久しぶりに夕食を共にした。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末様でした」
少し身を乗り出し、音也がにこにこと微笑む。更に、彼の素足がトキヤの足に絡んできた。乾燥した肌と暖かな体温がズボンの裾から潜り込んで脛をくすぐった。
「こら、やめなさい」
「あー、本当に美味しかった」
彼は叱られた事も意に介さずに鼻歌を一頻り歌い、口を開く。
「俺、やっぱりトキヤの料理が一番好きだな。自分の料理とかお店の料理よりずっと好き」
音也は赤色の目でトキヤを真っすぐに見つめて、微かに幼さを残した笑顔を浮かべた。そんな彼の言葉は心の空洞部分を瞬時に満たした。
「また、食べに来てください」
「うん。もう毎日でも食べに来ちゃいたいよ」
「……毎日でも構いませんから」
「え? だけど忙しいんじゃないの? 冗談じゃないけど冗談だから気にしないでよ」
トキヤが少し視線を逸らして口をつぐむと、音也は首を傾げた。
「何か不満そう」
「だから、食べに来てもいいと言ってるでしょう」
「いや、その気持ちはすごく嬉しいんだよ? だけどトキヤだって帰りが遅くなったりするし、俺もそうだから、きっとすぐに疲れちゃうって」
「…………」
立ち上がった音也が隣に来て床に膝を突いた。そしてトキヤの手を優しく握る。
「ねえ、トキヤ。俺は無理して欲しくないから言ってるんだよ。どうして俺の為に無理をしようとしてくれるんだよ」
「――あなたの事が好きだからに決まってるじゃないですか」
理由を頭で考える前に唇が動いて、そんな言葉が出て来た。音也の手を強く握り返す。できることならこのまま放したくないと強く思った。
「だから、あなたが痩せれば食事しているのか心配するし、私の料理を『美味しい』と食べなくなれば寂しい……。……私は、音也が好きです」
音也の目が驚いたように瞬いたが、すぐに嬉々とした顔をした。
「そうなの? 俺もトキヤの事大好きだよ!」
「いいえ、違います。今ようやく気付いたばかりですけど、恋愛感情の意味であなたが好きなんです」
「だーいじょうぶだって。俺もそういう意味でトキヤが好きだからさ」
彼の発言の意味を理解する前に、唇同士が触れ合った。突然の出来事に混乱しているトキヤに音也は悪気なく笑い掛ける。
「ちょっ、音也? 本当に言ってるんですか?」
「本気も本気! ずっと好きだったんだよ。俺達ようやく両思いだねっ」
トキヤの体を抱え上げたかと思えば、ほとんど投げるようにしてトキヤをソファーに座らせた音也が足の上に座る。その場から動こうとしても全く動けない状態だ。彼の手が頬をくすぐるように撫で、年相応の笑みを浮かべた。
「――それじゃあ、いただきます」
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